中澤裕子ドキュメント 30歳の走り

10月27日 都内某所
昨日は体育の授業がある日の前の日の気分でしたそこには体操着に着替えた中澤の姿が。
実は彼女、大会まであと1ヶ月と迫った中、自ら志願してトレーニングを始めたのだ。トレーナーは田代章さん。自ら望んだこと。もう後戻りは出来ない。
「ハードルをちゃんとやるのは体育よりもきついかもしれませんよ」
「体育の授業、わたし、ちゃんと出たことがないんです。体育が好きじゃなくて…」
今回、中澤が重点を置くもの。それは、今まで最も嫌いで苦手、しかし去年跳ぶことの楽しさを覚えた…ハードル。
まずは、一度、全力で走ってフォームを見てもらうことに。
ピキピキ「もう、膝が痛いですよ。(脚を指さして)ピキピキ(笑)。」
「フォーム自身は、そんなに悪くないですよ。少しづつ慣れて行けば、そこそこ成果は出てきますよ」
そして、さっそくハードルに挑戦。
まず、最初の壁となったのはハードルに対する恐怖心。始めこそ1つのハードルを危なっかしく、何とか跳んだものの、その怖さに全く跳べなくなってしまった中澤。
感覚を養うそこでトレーナーはハードルの横を跳んで、歩幅とリズムを合わせるように指示。まずは「恐怖心」を無くす。それは自分自身との戦いでもあった。
徐々にその感覚に慣れてきた中澤に、次にトレーナーが提案したのは、ハードルを倒しての練習。この高さで「跳ぶこと」に慣れる。
「大丈夫、私、跳べるようになるから。絶対跳ぶから。」
久しぶりに転んじゃった探りながらも、何とか跳べる高さだと気づいた中澤。この高さなら大丈夫だと安心し始めた矢先、歩幅が合わず転んでしまう…。
「…でも何で転んだんだろう。アハハハ。いやぁ、久しぶりに転んじゃった。もう怖い。」
この転倒で更に恐怖心が増してしまい、再び振り出しへ逆戻り…。更には慣れない運動で体が悲鳴を上げ始める。しかし、大会まで一ヶ月を切った中、ノンビリもしていられない。倒して低くなったはずのハードルが中澤にとっては、とてつもなく高く険しい山に見える…。
勝ちに行く!…しかし、集中して気持ちを切り替え跳んだところ、綺麗に五台のハードルをクリア。再び跳ぶ喜びを覚えたところで、この日の練習は終了。
−初日の練習を終えて−
「そうですね、何かねぇ…ホントに、学校に行っていたときは体育が大ッキライで、特にハードルとか、もう、嫌で嫌でしょうがなかったんですよ。だから、その体育の授業の日がある日、凄い憂鬱だったんですけど、同じ気分でした(笑)。でも、学校じゃないし、その頃とは気持ちが全然違うのと、今は「絶対、跳んでやりたい」っていう気持ちが凄くて…でも、転んじゃったんで、でもそれに負けないように、次は絶対跳べるようになります。」
−実際に練習してみて−
やっと気づいた30歳(笑)「あの、気持ちが違うね、子供の頃と。子供の頃はホントにどうやってサボろうかとか、そういうことしか考えていなかったけど、今は跳べないと嫌だし、良いタイムを出そうとすることじゃなくて、出来ないことが嫌なので、変わりましたね。変わりましたっていうか、何か、跳べたら楽しい。ようやく気づいた30歳(笑)。頑張ります。」
−指導方針など−
田代コーチ「…性格上、負けず嫌いっぽいので、その辺を上手く引き出して行けたら良いかなと思ってます。言ったことに対して、素直に体で表現してくれるんで、期待は大だと思います。」
先行きは不安の中にも、持ち前の負けず嫌いから一筋の光を見いだした初日のトレーニング。二人三脚の挑戦はまだ始まったばかり…。
練習二日目へ続く